火星の月の下で

日記がわり。

◎素浪人月影兵庫第1話〜第3話の感想

先週から始まった時代劇チャンネルの、素浪人月影兵庫を録画してちびちび見ている。
おぼえているところもあるにはあったが、かなりぼんやりとしてて、半分以上は初見感覚だ。
だが、それがかえって良かったのか、すこぶる面白い。
品川隆二さんへのインタヴューなんてのも載ってるんだが、今現在、こうしてすべて知ってみていると、いろいろと感慨深いものでいっぱいになるな。
特に誰もが見たときに驚かされる近衛十四郎の殺陣、刀さばきのものすごさ、速さ、カッコよさ。
「殺陣」だけで十分観賞価値のあった、おそらく最後の俳優さんじゃなかったろうか。
このインタヴューの中で語られている「少しだけ長い刀」・・・これは当時、めちゃくちゃしびれた。
品川さんの回想によれば、単に時代劇全盛末期の殺陣の名手、というわけではなく、日本時代劇史上トップランクの殺陣だった、というのが、当時の感覚だったようである。
インタヴューに名前が挙がっている、大河内伝次郎嵐寛寿郎萬屋錦之介勝新太郎若山富三郎、といった面々と比べても別格だった、ということらしい。
品川さんは現代劇の出身なんで、戦前の殺陣の名手には触れられていないけど、当時、戦前のフィルムはコマ落としだから、現在(当時)のスピード感と比べるのはフェアじゃない、たぶん戦前の時代劇俳優のすごさもこれくらいはあったんだろう、と思ってたんだが、そうでもなく、近衛十四郎が飛びぬけてすごかったんだろう、という気にも少しなってくる。まぁ、その辺は印象でしかないが。
つうことで、第6話まで見たので、簡単にその感想を以下に。
現時点では、第3話と第4話がすこぶる良かった。
第1話「浅間は怒っていた」:兵庫と半次の出会う、記念すべき第1話。お話は故あって出奔した小藩の姫様を兵庫が助ける話。
まず、近衛十四郎の若さに驚いた。このとき、50か51のはずである。
当時、時代劇映画はメイクの最先端だったので、そのせいもあるが、兵庫第2期や花山大吉で知っている渋いおっさんとは全然違う。
殺陣は、姫を追ってきた悪家老一味との大立ち回り。
多勢を相手にしたときの近衛の刀さばきは、ただただみほれるばかりである。
第2話「風は知っていた」:半次の性格が少しずつでてくる作。間抜だが、一本筋の通ったところを、という品川さんの、心意気を感じさせてくれるエピソードで、これは近衛の剣技の素晴らしさと同様、『花山大吉』の最後まで変わらなかった。
第3話「白い雲が呼んでいた」:前半のベストエピソード。893の出入りに雇われた兵庫だったが、そこの親分さんが奇襲にあい、兵庫は善戦するも組は全滅。兵庫はその親分の忘れ肩身の赤子を、親分の妻君の実家まで届ける途中、抗争相手の組の襲撃を受ける、というもの。
とにかく見どころがいっぱいで、当時の時代劇制作水準の高さをいたるところに見せ付けてくれる。
まず冒頭、いきなりの組同士の抗争。ここで兵庫が獅子奮迅の働きを見せるのだが、一人頭の報酬を求め「十人は斬るぞ」と親分に約束し、「一人、二人」と斬っていくさまは、第2期の人情家たる兵庫の面影ではなく、剣豪のすごさを存分に見せてくれる。
そして、赤子を連れ歩くうちに、情が移ってしまい「オレが育てる」とまでいいだす半次の優しさ、男意気。
そして何より、対抗する組に雇われていた用心棒の男、赤座。これが実にすばらしいキャラクター。
胸を病んでおり、余命いくばくもない邪剣の使い手で、最初は兵庫ごと赤子も切り捨てようと追撃してくるが、病状が進むラスト、母の実家に送り届けられた赤子を切ろうとしてやってきた雇われ組の頭を一刀の元に切り捨て、「おれは生きたい」「未来ある赤子の命を奪う権利はない」と心変わりして、兵庫に挑む。
「冥土のみやげに、十剣無刀流を負かしていく」と言って切り結ぶが、途中、吐血。
これを見て兵庫は剣を収め、その場を立ち去る。
赤座は「ま、まて、おまえのような剣豪の手にかかっておれは・・・」と言いつつ、その場に倒れる。
まさに鬼気迫る姿で、これを隠れた怪優としてその筋で評価の高い沼田曜一が熱演している。
このエピソード、一本の時代劇映画としても鑑賞できるくらいのクオリティの高さだと思う。
以前みたいに途中でデータが飛んでもイヤなので、とりあえず、ここまで。気が向いたら、また続きを書く。