火星の月の下で

日記がわり。

○『ジュエルペット てぃんくる』のED

2010年の傑作のひとつだと思う『ジュエルペット てぃんくる』、これが現在第3クールに入って、EDの曲が、1番の歌詞から2番の歌詞に代った。
空にラクガキ・・・full Version(ようつべ)
主人公のあかりちゃんは、内気で友達も少なく、すぐにネガティブな方向に考えてしまう、でも心はとってもやさしい12歳の女の子。
あかりちゃんにはモニカという、現役美少女中学生モデルをやっている姉がいて、これが成績優秀、スポーツ万能、人格高潔、人気もあり、しかも努力を怠らない完璧超人。
あかりちゃんのことにも親身に相談に乗ってくれたりするんだけど、クラスの女子なんかは、すぐさま「あこがれのモニカ様」と言い出して、最初の頃はあかりはいろいろ比べられて、劣等感の真っ直中に沈み込んでいく。
ふとしたことから魔法の国、ジュエルランドへ行き、そこで知り合った仲間達、ミリアや沙羅、といった魔法学校の同窓であると同時にライバルでもある少女達との交流の中で、少しずつ成長していき、最初は魔法世界だけだったのが、少しずつ現実世界(この作品ではレアレア界と言う)でも積極的になっていって、友達も少しずつできて、ついに先週では、気になっていた男の子にも告白してしまう、という、スタート当初からは信じられないくらいの成長を遂げていくあかりちゃんの、幼い成長物語、ビルディングスロマンの体裁を持っていて、実に良い児童作品に仕上がっているのだ。
しかも、教条的な教訓番組ではなく、随所に深読みできる凝った仕掛け、たとえばジュエルランドの沙羅は、一見友情で結ばれているみたいなのだが、実はあかりちゃんに同性愛的視線を送っていたり、あかりちゃんのジュエルペットの相棒ルビーが、レアレア界で変な助言をしたりと、くすぐりどころはかなりあって、ちょっと見、児童向けの非常に敷居の低い作品、その実、かなりアニメ・リテラシーを要求するという、実に奥深い作品になっているのだ。
そんなあかりちゃんの、少しずつ、ほんとに1年かけて、少しずつ成長していく姿、心の持ちよう、なんかをこの歌詞はうまくすくいとってくれていて、最近のアニメ・ソングの中では秀逸の一曲、と言っていいと思うのだが、この歌詞が、もう未来のない老人には、聞いていると切なく悲しく、つらくなってしまうこともときどきあるのだ。
♪空にラクガキ 希望を今いっぱい描こう
♪きっと未来は果てしないよ あの空と同じくらいに ok!here we go!
(中略)
♪あの雲の向こう ステキな何かが
♪明日の私を待ってるね(・・・一番の歌詞)
いつも立派すぎる姉が近くにいて、何事にも臆病になってしまい、オドオドしている自分。
しかもそんな自分をなんとかしたい、と思っているのに、心が邪魔をしてしまう、ネガティブな自分。
そんなあかりちゃんに、
まだまだ幼い君には、これからいっぱい未来がある。なんだってできる!
少しの失敗で、恥ずかしい思いや情けない気持ちで、自分の可能性を摘んでしまってはいけない。
しっかりと顔をあげて前を向いて歩いていこう!
・・・という応援歌なのだ。
心温まる実に良い歌詞だと思う。
だが、我々老人には、もうステキな何かも、希望も、果てしない未来もない。
その現実をときどきかみしめてしまうので、この歌詞は、とっても素晴らしいだけに、痛々しく切なくなってきてしまうときがあるのだ。
もちろん、この歌詞、曲は素晴らしいし、こっちが勝手に思っていることなんだが、歌詞が素晴らしいだけに、いっそう深くこちらの心に響いてくる。
だが、未来がもうないとしても、我々もしっかり前を向いて行かなくてはいけない。
あかりちゃんの世代には、「悔いのないようにしっかり生きていってほしい」と切に願うことにしよう。