火星の月の下で

日記がわり。

ヴィルトガンス、他

近代劇全集を見ていると、今ではとんと正嫡の文学史で名前を見ることがなくなった劇作家の名前に出会うことがある。
愛蘭のダンセイニ郷などは、今日妖精文学、小説、詩の方で著名だが、劇の方はかなり忘れ去られてしまっている感がある。
第一書房が出した昭和四年の全集第13巻には、シェーンヘル、ヴェルフェル、ヴィルトガンス、ヴィード、ハイエルマンス、ブルチビセフスキー、アッシュ、と言った作家の作品が載っていて、このうち、ヴェルフェルは現在でも表現主義の中核にいた作家でたいへん重要であるし、シェーンヘルも本邦ではほとんど聞かない名ではあるが、ウィーン演劇史においてたいへん重要な名前で、以前このブログでも取り上げた。
しかし残りの5人については、残念ながら翻訳でしか読んだことがない。
このうち、ヴィードとヴィルトガンスに関しては、森鴎外の翻訳戯曲集にも数作が載っているし、独Wikiにも項目があるので、忘れ去られた作家、とまでは言えないだろうけど、今日ではほとんど聞くことのない名前になってしまった。
解説を見ても、原綴が載ってないので、検索もかけにくいし、はたはた困ったものである。ブルチビセフスキーに至っては、表題では「ブルチビセフスキー」となっているのに、解説では「ブルツィビセフスキー」となっているありさま。
ヴィードがデンマーク、ハイエルマンスがオランダ、ブルチビセフスキーとアッシュがポーランドらしいので、原書を求めてみても、読める形で入手できるかどうかも怪しいので、それはそれでいいのだが・・・。
かつて大いに読まれ、この極東の地においてまで紹介された作家達が、時の流れの中で忘れ去られていく感があるのは、寂しい限りであるな。
ちなみにこの5人、東大出版会の「ドイツ文学史」にも名前がでてこない。