火星の月の下で

日記がわり。

ヘンリー六世(松岡和子訳)

ちくま文庫の『ヘンリー六世(三部作)』を買ってきてパラパラ拾い読み。
既に坪内訳と福田訳を持ってるけど、3部作が合本で一冊になっている便のよさを考えて、新規購入。
その理由で二部作が合本になっている『ヘンリー四世』も買ってみようかと思ったが、とりあえずこちらから。
訳文はさすがに新訳だけあってこなれている印象だし、注釈も下段にあるという「読みやすい」体裁なので、まあまあ良い。
ただ少し多くてくどいかな、注釈が。
初めて読む人も多いから、という想定なのだろう、その観点からすると、別に多くもないのだけど。
購入してみようかと思ったのは、松岡さんのシェイクスピア本を読んで少し興味がわいたから。
けっこう「読み手視点」で書かれていて、かつ、訳出上の言語の扱いについても触れられていたから。
ただラ・ピュセル(プーセル)を「乙女」と訳しているのは少し違和感があって、その辺は頭の中に坪内訳がしっかりと残ってるからだろうな。普通の読者には「乙女」の方が良いのだろう。
しばしば構成の粗さ、人間表現の薄さ等が指摘される沙翁のこのデヴュー作だけど、娯楽劇として読めばすこぶる面白い。
後期の悲劇作品や円熟したロマンス劇も人類の至宝と言っていいすばらしさだが、本作のような歴史劇特有のアクションも、読んでいてまるで眼前に場面がよみがえるようで楽しい。
沙翁の歴史劇というと、『リチャード三世』と『ヘンリー四世・第一部』しかなかなか評価してもらえないようなところがあるが、この三部作とか『ジョン王』とかもけっこう好きな戯曲である。