火星の月の下で

日記がわり。

谷川十七世名人の『怒濤の関西将棋』を読む

『怒濤の関西将棋』を買ってきて読む。
棋士が書いた棋士の本、ということで、将棋の本だが棋譜はまったくない。
書かれている内容は、阪田三吉に始まり、奨励会三段リーグに進んだ里見三段(ただし現在病気で半期休業中)のことまで、主に関西将棋に関わる人達についての人物伝、そこに谷川自身の歩みを重ねた内容。
単に事実項目としてだけ見るのなら全てというわけではないけどあらかた知っている内容で、むしろそういった有名なできごとが、谷川十七世名人の目にどう映っていたか、ということの方に興味を引かれる。
事実項目としてはむしろ初級のファン向けという体裁だと思う。
とはいえ、第一戦で長く対局を続けてきた棋士なので、ところどころにチクッとした刺激的な内容も秘められていて、事実項目を知っていたとしても決して退屈する内容ではないし、むしろ知っている方が楽しめるのではないかと思う。
本書のポイントは前半、阪田三吉に対して、巷間伝えられているネガティヴなイメージ部分をなんとかして払拭したい、という願いにも似た文で、このあたりも多少なりとも明治以後の将棋史をかじったことのある人なら基本常識の範疇ではあるのだけど、当然そうでない、電王戦などで最近棋士の世界を知った人もいるだろうから、そういった入門から初級に上がったあたりの人のため、という風にも見える。
特にネット世代は事実無根であっても悪い噂なんてのはよく知っているしね。
そういうスタイルなので、とりあげている項目自体は極めて平凡なのは仕方ないし、当然だろうと思う。
ただ少しばかり贅沢を言わせてもらえるなら「初代関西名人」と言ってもいい小林東伯斎についても言及してほしかったところである。