火星の月の下で

日記がわり。

○801穴と体毛のミメーシス

女子向けアニメ、といっても濃厚なBL的なものから乙女ゲー的なもの、果てはヤローが見ててもハマれそうなものまでいろいろあるが、そこで描かれる異性像について。
ひと頃よく言われていた「女は男の射精感を描けない」「男は女の受胎感を描けない」と言うのは最近では滅多に聞かなくなった。
それは当然で、性と妊娠・出産に関してはエンタメ的な視点などよりもはるかに多くの学術的医学的文化的見地からの研究なり報告なりがあり、しかも研究者用のおカタいものから、市井の平均的な夫婦、母親にわかりやすく説明しているものまで出ていて、ほんの少しの努力でたいていの情報は手に入れられるようになっている。
もしそういったものを「男だから」「女だから」描けないとすればそれは制作者、クリエイターの怠慢である、と言っていいくらいに資料は普通にあるし、中には異性にその気持ちがわかるように指南してくれるものまである。
そういう扱いようによってはきわどいものではなく、生活感覚の中で感じるちょっとした違和感、異質さ、みたいなものはまだまだこれからで、これも制作側が根気よく調べていけばクリアできるようになる時はくるだろうし、一部の人達は既にそういった手法なり技法なりは手に入れているようだけど、平均的、一般的なエンタメ作品ではまだ少し残っていたりする。
特定作品をやり玉にあげることが目的ではないので固有名詞は出さないが、たとえば美少年の描写。
美少女、美幼女の描写に関しては、やれ目が大きい、乳房が不自然、体重数値が非常識、といろいろ言われるので、ここは女性の描く美青年について、少し思うことを。
形状的なことを上げればそろいもそろって下顎部が尖っていて口唇がデカい、というのが上げられるけど、そのあたりはデッサン力とも関係してくるので、今はおいておく。重大なことではあるんだけどね。
昨今気になるのは、体毛感覚で、美青年は女性ホルモンでも注射してんじゃねーかと思えるくらいに体毛感が希薄で、50年経っても髭が生えそうにないデザイン、デフォルメになっているのをよく見かける。
まれに中心人物とかではなく、その父兄とか上司とかでヒゲつきキャラが描かれることがあっても、そろいもそろってツケヒゲっぽい。
要するに日常感覚の中での、男性ホルモンの発芽としての体毛がよく認識できていないのだろうと思う。
そういったクリエイター達の相手は男性ホルモンでむんむんしているむさ苦しくて汚らしいおっさん読者ではなく、男性なんか父兄とか学校の先生、同年代のクラスメイト男子くらいしか知らない女子が相手だろうから、それはそれでいいし、別にそのことが欠点になったりはしない、むしろ耽美的効果からプラスになることの方が多いのだろうとさえ思う。(熟女対象系作品はややこしくなるので、今は少し外に出しておく)
これ以外にも血流問題などもあるけれど、視覚的に明瞭なものとして体毛を一例として考えてみると、これって男性作家における、女子の経血、およびその痛み、苦しみが日常感覚として理解しづらいことと比較的近いのかな、という気がした。
もちろんこういったこととても現代の日本では簡単に調べられるし、豊富な資料がいたるところにあるけど、性交や妊娠といった日常生活とはかけ離れた時の状況と違って、日常性、生活のベーシックとしてあるところの人物像やその表現に繋がってくるので、どんなに資料装備していても、ときどきポロッとその感覚が欠落してくるときがあるように見える。
このあたり、文章だけで表現できる物語や小説なんかと違い、絵がともなう漫画やアニメの難しいところでありますな。
では現実からの模倣としての、性差、それはどのように顕現し、また受取手は考えるか、ということについて、表題として「ミメーシス」を掲げてみたのだけど、昼休みの合間に書いていたので、時間がなくなってしまったのと、少し疲れてしまったので、その気が持続していればまた後ほど書く。・・・こういって続きを書いたことがあんまりないのがちょっとアレだけど。(^_^;
現実の模倣の限界、とは思わないのだけど、概念の模倣及びその描写について、ということ。
むろん、上の体毛とか経血とかっていうのは一例なので、他の例でももちろん良い。
それこそが表現におけるミメーシス問題になってくるのだろうし。