火星の月の下で

日記がわり。

○色のイメージ

「赤、青、黄、紫、緑…“色”を文章でどう表現しますか? #文字書き版カラパレ」(togetter:1148232)
少し面白いネタだったので、これについて。
面白いのは、寒色系に比較的好印象な単語が並んでいること。
ところがメルヘン研究などでは、広義のロマン派以前において、つまり18世紀前半以前においては、青、緑というのが畏怖の対象であり、民心にとって嫌悪、もしくは警戒すべき色だったことがよく知られている。
電気照明のない昔、青は森につながる暗闇の色であり、緑は人知れぬ凶賊、猛獣の跋扈する森の色だった。
黄色などにもその傾向が少しあるのだが、黄色の場合黄金の色へとつながることもあって、青や緑ほどの得体の知れない不気味さまではいっていない。
暖色の代表、赤はまぎれもなく「血の色」で、これは殺人や流血沙汰ではなく「命の色」「情熱の色」であったので、18世紀以前では比較的好感度の高い色だった。
今の日本で、青や緑に否定的感情を見る人は少数派で、多くは「美しさ」や「若芽の色」を見るのではないだろうか。
だが青と緑の好感度が上がったのは文化史的に見てもつい最近のことで、旧大陸においては山岳小説、新大陸においては海洋映画が一般化して以降のこと。
もちろん作家的センスとしてそれ以前に青や緑の美しさに気付いていた人(特に印象派から表現主義の詩人、光学機器発達以降の画家)もいるにはいたが、どちらかといえばまだ少数派で、大勢をひっくり返したのは20世紀になってからのことである。
なお、ここでいう山岳小説とは、日本の登山小説のことではないので念のため。