火星の月の下で

日記がわり。

1966年発行の文庫クセジュ「ドイツ文学史」(QJ11)を最近引っ張り出してきて、毎夜枕もとで拾い読みしている。
原著が書かれたのが1951年なので、現代がそのあたりで終わっている。
したがって、最近のドイツ文学史ではあまり重要視されないルネッサンス(15世紀)から宗教改革バロックを経て啓蒙時代(18世紀)に至るまでの記述量がけっこう多くて面白い。
ちゃんとした研究書、というか学術論文とかだと十分このあたりのものもあるし、それなりに書籍もそろえている方だと思うけど、文庫サイズでこの時代をここまで詳述してくれているのは少し珍しいと思う。
だいたい中世騎士小説の時代が終わったら、もうすぐにレッシングと啓蒙時代に突入しているものが多いからね、文庫サイズだと。

そしてレッシングから疾風怒涛、ドイツ古典主義、ドイツ・ロマン主義の記述量もかなりあって、この時代に興味のあるものにとってはたいへんステキな良書に仕上がっている。
もちろん文庫サイズなので、あくまでその範疇の中では、ということではあるけれど。

そして、現代。
ベルリナー・アンサンブルを率いて、DDRの文学・演劇を牽引し、戦後共産主義文学の一翼を担ったブレヒトが、ビンディングやポンテンとともに羅列的に名前を挙げられて終わっている、というあたりも興味深い。
現代の通史だと、ブレヒトの価値ってもういやになるくらい強調されるからね。
以前も書いたけど、ブレヒトは理論の方ならば評価してるけど、実作の方は全然面白くないので、はっきり言って駄作家扱いなのだ。
20世紀文学としては、マン、ヘッセ、カフカは当然として、ロートやヴェルフェルの方が扱いが大きい、というのも、なんだかニヤッとしてしまう。
ともかく半世紀ほどの時間差で、ここまで主軸が入れ替わってしまう、というのをあらためて体験させてくれる好著でありました。