火星の月の下で

日記がわり。

ノヴァーリスの青い花

独逸浪漫派の妖花、ノヴァーリスのメールヒェン小説「青い花」…原題は「ハインリッヒ・フォン・オフターディンゲン」で、これは主人公の名前なのだけど、日本では象徴として登場する「青い花」の方を訳名につけることが多い。
10日の日記で、メルヘブン第1話では気づかずに、結局書くこともないままズルズルと来てしまった、というのは、OPの歌詞の中にある「青い花」と「神秘」で、この神秘にノヴァーリスというルビがふってあることについて(もちろん歌詞なので、そこはノヴァーリスと発音される)何か書いておこうかな、と思っていたのだ。ところが、ズルズルと日を重ねてくると、なんかいまさらそんなことについて書くのもちょっとなぁ、と思っているので、アニメ作品との関連にはこだわらず、ノヴァーリスの思い出あたりを記録しておこう。
ノヴァーリスというのは、28歳の若さで肺病に倒れたフリードリヒ・フォン・ハルデンベルクの筆名で、「青い花」とは結局第2部『成就』を書きかけたところで未刊に終った小説である。ハルツの麓の小貴族の出でありながら、鉱山学を修め、優秀な官吏としてスタートした若きエリートが、病弱の少女ゾフィー*1を知ることにより、そして十代半ばで天に召されたその死をもって、霊感を受け、あの魔術的浪漫主義的小説に臨んだことはよく知られているが、その哲学的な内容もさることながら*2「花粉」に代表される箴言や、「青い花」「ザイスの学徒」に散見する詩や文句の中に、心ふるわせるものを感じてしまうのである。
「世界は浪漫化されねばならない」「メールヒェンは文学の規範である―すべて詩的なものはメールヒェン的でなくてはならない」等々。
もちろん、独語のメールヒェン(Maerchen)は日本語のメルヘンとはかなり異なるものなので、童話、みたいな観念では取り扱えないんだけど、よくノヴァーリスを表している文句だと思う。
疲れたので、続きはまた後ほど。

*1:13歳でノヴァーリスと婚約し、15歳で死んだ。

*2:魔術的観念論、という言葉から連想される、アングロサクソン式の怪奇小説などではないことは言うまでもないのだが、魔術や浪漫と言った言葉が、英語からの訳語として日本語の上に落ちてきており、従って、独逸浪漫主義の中から発せられる魔術やポエジー、メールヒェンといった単語はそのまま日本語として表記すると、今日かなり誤った印象をもたれかねない。その意味で、独逸の魔術小説や幻想小説を語る際には注意が必要だと思う。