火星の月の下で

日記がわり。

ヒルデブラントの歌

Reclamの文庫版ドイツ文学史は、実例が豊富で、ちょこちょこ記憶の整理をするときに引っ張って来れるよう、書棚の手に取りやすいところにおいてるのだが、最近は最初の方の巻、Mittelalterの最初の2巻をパラパラ拾い読みすることが多くなった。
最近の興味の方向はもっぱら東方教会関連なので、それほどじっくり読み込むとか、時を忘れて何度も読み返す、ということはさすがにないのだが、それでも時折読み返してみると、若い頃の興味が甦ってきて、しばし想いをはせてしまうことがある。
さて、『ヒルデブラントの歌』も、ハインリッヒ・フォン・メルケの『メメント・モリ』なんかと一緒に載ってて、ちょっと読みのつもりが、ついつい引き込まれてしまう。
もちろん、原文は古代高地ドイツ語(AHD)だったりするので、そんなに簡単に読めるわけでもなく、通釈と照らし合わせながらなんだけど、見事に残る屈折語尾などは、読んでいて飽きない。
断片残存がまったく残念で、完結したものはどんなだったろう、と物思いにふけってしまうこともある。
もっとも、ディートリヒ伝説圏に所属していたようなところもあるので、完結した作品として存在していたかは不明だけど、それでも、ハドゥブラントとの対決で、恐らく息子を斬り倒してしまったであろう部分までは読んでみたかった、と思う。
このReclam版には、写本の最初の1ページの写真がモノクロで残っていて、しみのあとや穴なども生々しいが、それでも冒頭の「Ik gihorta dat seggen,・・・」という下りはなんとか見える。
だいたい8世紀末に原本が蒐集され、9世紀初頭、恐らく820年頃写本された、と言われているが、1000年にものぼる時に耐えてきた物を見るのは(写真越しではあるけど)感慨深いものがある。
こんなのを夜読みだすと、いっぺんに睡眠不足になっちゃうところである。(笑)