火星の月の下で

日記がわり。

非英語圏SF

ふだんあまり文芸系の2ちょんは見ないのだが、たまたま覗いてみたら、面白そうなのがあったので、そこから無断転載。
SF・Fantasy・ホラーから、【旧共産圏】非英語圏SF総合2【欧亜南米アフリカ】より。

国外非英語圏SF小説必読書30
01 ザミャーチン「われら」(ロシア語)
02 ベリャーエフ「ドウエル教授の首」(ロシア語)
03 エレンブルグ「トラストDE」(ロシア語)
04 ブルガーコフ「犬の心臓」(ロシア語)
05 エフレーモフ「アンドロメダ星雲」(ロシア語)
06 ストルガツキー兄弟「ストーカー」(ロシア語)
07 ペレーヴィン「チャパーエフと空虚」(ロシア語)
08 ルキヤネンコ「ナイトウォッチ」(ロシア語)
09 レム「ソラリス」(ポーランド語)
10 チャペック「山椒魚戦争」(チェコ語
11 ヤン・ヴァイス「迷宮1000」(チェコ語
12 カリンティ・フェレンツ「エペペ」(ハンガリー語
3 :名無しは無慈悲な夜の女王:2011/06/10(金) 21:46:50.77
13 ヤシルド「生きている脳」(スウェーデン語)
14 シェーアバルト永久機関」(ドイツ語)
15 ヘルベルト・フランケ「思考の網」(ドイツ語)
16 エシュバッハ「イエスのビデオ」(ドイツ語)
17 シェッツィング「深海のYrr」(ドイツ語)
18 ヴィリエ・ド・リラダン未来のイヴ」(フランス語)
19 ジュール・ヴェルヌ地底旅行」(フランス語)
20 ルネ・バルジャベル「荒廃」(フランス語)
21 ジュリ「不安定な時間」(フランス語)
22 ヴェルベール「蟻」(フランス語)
23 ウエルベックある島の可能性」(フランス語)
24 イタロ・カルヴィーノレ・コスミコミケ」(イタリア語)
25 ディーノ・ブッツァーティ大いなる幻影」(イタリア語)
26 ウンベルト・エーコフーコーの振り子」(イタリア語)
27 ホルヘ・ルイス・ボルヘス「伝奇集」(スペイン語
28 カルペンティエール「時との戦い」(スペイン語
29 ウィン・リョウワーリン「インモラル・アンリアル」(タイ語
30 張系国「星雲組曲」(中国語)

いくつか読んでないのもあるんだけど、なかなか面白そうな選出。
ただし、あくまで翻訳があって、かつ、入門級というか、基本というか、そういったところを押さえてあるみたいなので、コアな読み手だったらいろいろ不満が出てくるかもしれないが、それなりに面白いセレクトだと思う。
ただ欧州大陸側のSFって、ちょっとした注意が必要で、それは常に幻想文学とのあいだに「驚異」のクッションがはさまれていることで、幻想文学からSFをみたり、入っていったりすると(同時に本格推理小説においても)わりと普通に感得できるのだけど、最初からSF、それも米国式SFになじんでいたりすると、その辺の進化系統図というか、境界性があまり見えてこないので「なんか違う」という感覚が常に残ってしまうのではないか、ということだ。
英語圏SFというのが、今日あまりに巨大になってしまったので、その特異性が普遍性になってきつつあるところもあるのだけど、実は米国SFというのはそうとう変種だったのである。
それは「驚異」のクッションをはさんでいない、もしくは少ないというのがあるので、幻想文学との間の連続性がそうとう薄い状態になっている、ということだ。
これはともすると、SFの孤立、とも見えてしまう。
こんにち、米国式SFが量的にも質的にも、巨大なものになってきているので、孤立性はほとんど意識されなくなっているが、孤立していない少数派(この言い方も変だけど)の側から見ていると、そのいびつさが認識されることがたまにある。
「驚異」という概念・用語は、幻想文学理論なんかを読んでいるとしばしばでてくる表現で、日本語の「驚異」をあててしまうと、違うニュアンスを生みがちなので原語たる「merveilleux」と書いた方が良いのかもしれないが、一応文学用語としては定着していると思われるので、その意味で使うときにはカギカッコ付で書いていきたいと思う。米国式SFに、驚異がない、驚異を軽く見てきた、という意味では決してないので、念のため。
その「驚異」、幻想文学の周辺概念もしくは、近代幻想に対する前史的概念として近代自我との峻別点として、「幻想」成立以前のスタイルとして見られることが多いが、同時にそれはSFとの共通領域をも多数含んでいた*1
SF史、SF理論なんかに目を通して見ると、欧州や西側古典に根を求めるときにあげられるものの多くに、この「驚異」が該当していることが多い。
60年代頃から盛んになってきた、「幻想」と「驚異」の峻別により、幻想文学史、理論はそうとう整理されてきたけれど、SFの場合、歴史が浅い分、まだその整理ができていないような気がする。同時に、それはそういう峻別を必要としないほど、米国式SFが巨大、かつ孤立的なためというのもあるかも知れないが。
・・・と、ここまで書いてきて「孤立」ということばだと、ネガティブなニュアンスを含みがちなので「独立」とした方が良いのかなぁ・・・という気がしてきた。
こういった用語を使うと、なかなか言いたいことの細かい点に到達するのに時間がかかりそうで、なかなか面倒であるな。
ということで、理論的構築(・・・というほど構築はしてないけど)はやめて、非英語圏SFを読む場合には、「驚異」との接触領域期を、意識していった方がいいのかなぁ、と思う昨今である、という、少しすっきりしないまとめにかえておこう。
まぁ、日記だし、別に結論とか出なくても良いか。
今回の目的は、非英語圏SFのメモ、ということで、上に上げたもののうち、読んでないモノを死ぬまでに(案外もうそれほど多く時間が残されていないので)読んでおきたいものだ。

*1:ここで言うSFは、もちろん欧州非英語圏側のSF。