火星の月の下で

日記がわり。

人文

モルグ街とスキュデリー老嬢

一般に『モルグ街の殺人』によって、近代推理小説の幕が切って落とされた、とされるが「推理小説」という形式に対してならば異論のある人は少ないだろう。確かに「Golden Twenties」を経て、理論やトリックが分類整理され、そのスタイルにおいて進化をとげて…

哲学科

哲学科に入ったんだが今更ながら後悔している昨日、某化学科卒業後一度社会に出てから二十代半ばに再び別の大学の哲学科に行ったことを少し触れたら、タイムリーというかなんというか、こんなまとめ記事が上がっていたので、リンク。

日本SF大賞候補作、出る

日本SF作家クラブの一面によると、今年のSGF大賞候補作が決まったらしい。*1今年の目玉は『まどか☆マギカ』が入っていることで、過去にも少し書いたけど、映像作品が候補作に上がってる、というのは、どうもしっくりこない。『まどか☆マギカ』自体は大好きだ…

少なくともクリエイターは一次資料をあたるべき

某深夜アニメを見てると、魔術師だの魔法使いだのという単語がポンポン出てくるんだが、内容を吟味してみると、ああ、物語はシリアスにやってんのに、魔術とかまともに研究したことがないんだろうなぁ・・・と思う場面に頻繁に遭遇。以前固有名詞を上げてラ…

妖怪研究と音韻研究

友人が少し関わっているので、固有名詞は避けるけど、妖怪研究をやっている民間の好事家連中は、なぜああも音韻学の成果を無視して発言するのかね。言葉によって伝承されているものであれば、その言葉がどういう形で、今日の標準語とどう違っているのか、と…

今年のノーベル文学賞

2011年度のノーベル文学賞に、スウェーデンのトーマス・トランストロンメル氏が決定。すみません、知りませんでした。北欧関連はけっこう読んでるつもりだったけど、現代作品はそれほどでもなかったからなぁ・・・。受賞した直後に日Wikiを見にいったら、まだ項…

非英語圏SF

ふだんあまり文芸系の2ちょんは見ないのだが、たまたま覗いてみたら、面白そうなのがあったので、そこから無断転載。SF・Fantasy・ホラーから、【旧共産圏】非英語圏SF総合2【欧亜南米アフリカ】より。 国外非英語圏SF小説必読書30 01 ザミャーチン「…

悲劇第一部・牢獄の場

『まどか☆マギカ』第11話、最終話を見てから、またぞろ『ファウスト・悲劇第一部』を引っ張り出してきて、いろいろ拾い読みをしていたりする。そんな中で気になった、最後の場面、グレートヒェンの牢獄の場面。ファウストとの恋によって生まれた我が子を殺し…

音素と世界祖語

世界のすべての言語、アフリカの「祖語」にさかのぼる=調査 スラドさんとこの記事(世界の言語の起源解明か)から。 音素にも創始者効果が認められれば、現代の言語コミュニケーションはアフリカ大陸で発生し、その後、ほかの大陸に広がったとの考え方が裏…

妖精が人になるのか、人が妖精になるのか

ピーターパンというと、ディズニーのアニメにもなった『ピーターパンとウェンディ』が有名だが、それに先行する『ケンジントン公園のピーターパン』に面白い記述がある。ピーターパンには誕生日が来ない、というもので、ピーターパンは、生後1週間で寝床か…

基礎ドイツ語のHP

基礎ドイツ語オンライン・作家紹介基礎ドイツ語のHPにドイツ語圏の作家紹介、として、エンデからグラスに至る12人の作家が扱われてるんだが・・・、昨今の需要の影響か、かなり偏った印象。一応、ゲーテ、シラーといったあたりは押さえてはいるんだが、シラーの…

各国文学案内

ついったで書いてたんだけど、追加記録しておきたいので、こちらにも転記。 岩波文庫別冊版各国文学案内は、1960年代の旧版から、世紀の変わり目頃に相次いで書き足し、改訂版が出た。だが旧版が出た頃に比べて、今ではもっと精緻な文学史が手軽に利用できる…

感情移入と異化効果

かつてブレヒトは自身の演劇を叙事的演劇とし、劇的演劇との違いをこう説明した。 「劇的」演劇は舞台が事件の継起を具体化し、観客を演技の中に巻き込み、彼のエネルギー、行為への意志を抱かせ、いろいろな感情を抱かせ、経験を伝え、観客は行為の「中」に…

ジャクリーヌと日本人

会場での暇つぶし+往復の新幹線で読んだもの。ラノベ、児童文学なんかもいくつか持ち込んだけど、一番面白かったのがこれ。 『ジャクリーヌと日本人』ヤーコブ作、相良守峯訳、岩波文庫。小説そのものの魅力というより、扱っている素材、時代がつっこみどこ…

マルコ福音書の面白さ

子供の頃は、聖書物語というと断然旧約の方が面白くて、創世記だけじゃなく、ヨナ書、ヨブ記、といったかなり変態じみた話も載っており、読んでて「物語的」な意味で楽しかったのだが、おとなになってくると新約もなかなか面白いと思うようになった。念のた…

エーデン・フォン・ホルヴァートとサッカー

W杯にあわせてか、Projekt Gutenbergのトップがサッカーと題されて、2人の詩人の作品の一部が載せられていた。リンゲルナッツとエーデン・フォン・ホルヴァートで、リンゲルナッツの方は読んだ記憶があるようなないような・・・。 ホルヴァート(1901-1938)…

詩人アイヒェンドルフ

詩というのは、どこの言語であれ、韻律の問題が常について回るため、少なくとも近代以降のものについては、原詩にあたらねばならない。それゆえ、本来が詩人の質たる人であっても、他に有名な物語、戯曲、小説、なんかがあると、その言語圏以外ではそちらを…

「ハイジ」盗作疑惑

「アルプスの少女ハイジ」原作に盗作?疑惑 この小説はアニメ「アルプスの少女ハイジ」の原作で、騒ぎのきっかけは、ドイツで活動する文学研究者ペーター・ビュトナー氏(30)が、ドイツ人詩人・作家のヘルマン・アダム・フォン・カンプが1830年に発表した「…

頭の悪い文学全集

『文学全集を立ちあげる』というのを読んでて、著者達の頭の古さ*1、というか意外な知性の低さに少し驚く。演劇史も文学全集の中に組み込むのなら、あまりにも世界的潮流を無視している。思うに、旧制高校時代の文学的青春の残滓、あるいは亡霊を語っている…

納西語と古代日本語

ナシ語:ナシ族出身高山市の交流研修員に、武庫川女子大教授が聞き取り調査 /岐阜 上代文学や古代語が専門の同教授は高山市が97年12月に友好都市を結んだ麗江市を旅行した際、ナシ族が話し言葉に昔ながらのナシ語を用いていることに興味を持った。さらにナ…

青少年に薦める夏の課題図書

腹こわして家でふせってたので、どうもネタもないため、思いつきでこんなものを書いてみる。夏休みも近いので、若い人に読んでほしい文豪作品、でもちょっと変、みたいなのをズラズラ書いてみる。といっても、カビの生えた青春小説や、古臭い恋愛小説なんか…

性詞いろいろ

「ビッチ」という言葉について(さらしるさんとこ経由で、utopianismさんとこのコラム)「ビッチ」「サノバビッチ(son of a bitch)」なんて罵倒語は、映画を通じて入ってきたように思うが、最近のネット界隈でも定着してきた、という話。現状でのネット上…

散文の文体について覚書

久しぶりに日本文学に分類されるジャンルの小説を読む。以前、ラノベを読むときに、読書体力が落ちてきて、半日で1冊なんてとても読めなくなってきた、と書いたが、なんかちゃんとした、という言い方はかなり変だけど、文学小説だと昔と同じペースで読める…

語学について覚書

諸外国語は好きで、それこそ小学校の頃からいろいろとかじってきたが、本業に、ということを考えたことは一度もなかった。大学も最初数学専攻、それから化学専攻へと浮気して、専門にやった、という感覚はまったくなかった。「語学は男子一生の仕事である」…

バーバリアンズ

またヒストリー・チャンネルでバーバリアンズをやってたので、ぼんやりと見ていた。現在放映のシリーズは1.バンダル族、2.フランク族、3.サクソン族、4.ランゴバルト族の「バーバリアンズ2」で、4まで通して見た今となっては、けっこうセットや役者の…

Kafkaの『Vor dem Gesetz』

近くの書店にNHK語学講座「アンコール・ドイツ語講座・応用編」というのが来てたので、なにげなく買って帰る。語学講座は、金・土の応用編だけたまに聞いてたりしてたんだけど、続き物になってると、どうも一度とばすとそれっきりになったりして、あんまり真…

新版ガリア戦記

書店をなにげなく歩いていると『ガリア戦記新訳』というのがPHPから出ていて、「今週の新刊」として平台に積まれていた。『ガリア戦記』というと、近山金次訳の岩波版でずいぶん世話になったし、部分ではあるが、ラテン語学習中に、大学書林の対訳シリーズで…

消滅の危機にある少数民族言語

支那少数民族64言語が消滅危機。まだニュウスを読んだだけなんで、とりあえずのメモだけ。新聞のサイトなんで、消えるかもしれないため、一部引用しておく。・・・・・・・・・・・・> 中国国内では現在、56民族が129の言語を使用しているとされるが、>中…

カイザー、クルティウス、ジャン・ルーセ・・・

昼、ちょっと時間ができたので、書棚からカイザーの『言語芸術作品』を引っ張りだしてきて、拾い読み。なんか鉛筆でメモみたいな走り書きがいたるところにあって、妙に懐かしい。奥付を見ると、法政大学出版局、1972年初版となっている。ブックカバーが神戸…

忘れられたノーベル賞作家・・・カール・ギェレルプのことなど

寒いね・・・。あまりなにもすることがおきない上に、先日書いた新型インフルエンザのこともあって、あまり外へ出てなにかする気も起きず、部屋で本を読んでた。大昔、川端康成が受賞したときに主婦の友社から刊行された「ノーベル文学賞全集」というのがあ…